研究内容


 雷・材料・診断研究室では、
  現在、以下の5項目に関する研究を行っています。
  詳しい内容については、本ページの下部をご参照ください。
 
項目 研究課題名
1 風力発電機ブレード耐雷保護の研究
2 ICタグ無線診断システムの研究
3 超純水絶縁媒体の研究
4 ナノバブル絶縁油の研究
5 ZnO添加エポキシ電界緩和の研究

 


1.風力発電機侮レート耐雷保護の研究

 風力発電機は、再生可能エネルギーとして太陽電池、海流発電と共に今後の大幅な発電容量の増大が期待されています。風力発電は、1年を通して風が安定して吹いている場所に設置する必要がありますが、そのような場所は雷が発生しやすい場所でもあります。 
 雷が風力発電機に落ちる場合に、ブレード(羽根)に対する障害が大きな問題となっています。雷がブレードの内部に侵入すると、この電位と流れる電流の積の大きな熱量が放出されて、ブレード内部の圧力が高くなり、破裂して、図1に示すようにブレードが破損してしまいます。この現象は、図2に示すような大電流試験で実証されています。 
 これを防止するために、ブレードには雷の電流を流す専用の電極(ダウンコンダクタ)が据え付けられていますが、このダウンコンダクタに思ったように雷の電流を流せない等の問題が発生しています。 
 一方、ブレードの表面に雷の電流を流すことができれば、雷によるブレード破損は防止できます。そのため、雷がブレード内に侵入するために、どのような現象が起こっているのかを明らかにして、ブレードの保護方法を提案することが本研究の最終目標になります。2016年度は、まず、雷がブレードの材料であるFRP(ガラス繊維強化エポキシ)板を貫通するメカニズムを明らかにします。具体的には、雷インパルス発生装置で、高電圧を発生させ、棒対平板のギャップで放電を発生させます。この放電がFRP板を貫通させる要因が、電界、熱、圧力のどれが支配的であるかを明らかにします。2017年度は、この要因に対して貫通しないFRPを提案することを考えています。さらに、雷インパルス発生装置で作る放電と、実際の雷の等価性を明らかにしていきま す。

図1 Blade Failure of Yusuhara Farm,in the West of Kochi,Japan in October 2002

図2 250kW 1/2-Blade Model,11kA-66C Inside-Current

図出典:28th International Conference on Lightning Protection,XI-6 pp.1509-1514,and XI-7 pp.1515-1521,Kanazawa(2006)


2.ICタグ無線診断システムの研究

 機器の診断を行うのに、従来はある時間スケジュールに沿って機器のメンテナンスや部品交換を行う時間計画保全(TBM)が主流でしたが、機器のより高精度の診断をするために状態監視保全(CBM)が使われ始めています。しかし、通常両方の保全とも常時監視を行うものでなく、検査を実施したときに異常が発見できないと、故障を未然に防ぐことができません。しかし、従来の診断システムを用いて常時監視することは多額の費用がかか現実的ではありませんでした。 
 近年、非常に小さなICチップで消費も小さいため電池で駆動でき、センサを取り付けて常時監視が可能なICタグ(IFIDとも呼ばれます)が開発されています。現在では、非常に狭い部分や、輸送時の商品の常時モニタとして使用され始めています。 
 現在では、温度、湿度、照度、傾斜などのセンサを取り付けたICタグが実用化されています。そこでセンサ付きのICタグを高電圧機器に取り付けることで定期点検間の機器の状態の検出・保持し、定期点検時に機器の状態を知ることができるようになります。この結果、図1に示すような定期点検では分からなかった一時的にしか出てこない機器の故障の兆候を捉えることができるようになり、よりキメの細かい機器のメンテナンスが可能になります。 
 将来的には、図2、図3に示す高電圧機器に取り付けて部分放電の診断が可能な、部分放電センサ付きICタグを開発するのが目標です。しかし、その前に高電圧部分でICタグを使用するためには高電界部分に装着する必要が出てきます。このため、2016年度では、高電圧機器に加わる周波数領域では電界が透過できず、通信のための周波数帯域の電磁波は透過する静電シールドを製作し、実際に通信が可能か温度センサ付きのICタグを用いて実験します。具体的には、雷インパルスの周波数である250kHzは透過できず、通信に用いる900MHzは透過する材質・厚さ・構成の静電シールドを試作して、実験、検証を行います。

図1 ICタグを適用した診断手法

図2 高電圧機器に取り付けたICタグイメージ

図3 部分放電センサ付きICタグ機能図


3.超純水絶縁媒体の研究

 水は非常に溶解性に富み、いろいろな物質を溶かし込んでいるため抵抗率が低く、絶縁に使用されている例はほとんどありません。しかし、不純物を除いた純水、超純水は、抵抗率が半導体並みに高くなり、環境低負荷の各種用途の絶縁に使用される可能性があります。このため、有機物、無機物の不純物の含有率と絶縁破壊特性の関係を求め、水の絶縁の破壊機構の解明を進めます。  
 具体的には、2016年度に雷インパルス電圧を用いて超純水の破壊電圧を求めると共に、交流電圧と同様熱破壊が発生しているかを検証します。また、高分子を混ぜることで純水の抵抗率がどれほど高くできるかの検討も引き続き行います。

図1 純水絶縁破壊装置

図2 絶縁破壊用電極

図3 超純水の絶縁破壊電界の温度・流量依存性

図出典:平成27年電気学会全国大会 2-017,Vol.2,p21(20159


4.ナノバブル絶縁油の研究

 油入変圧器をコンパクトにするために、絶縁油の絶縁耐力を向上させる方法が各種検討されています。その1つの手段として、絶縁油中にナノ粒子を混合分散させて、絶縁油中で発生したストリーマの進展を分散させたナノ粒子で止めることで、より高い絶縁耐力を持たせる方法があります。図1に示す通り、これまでに0.05Vol%程度の100nm程度の直径を持つナノ粒子を絶縁油中に分散させた場合に10%以上の絶縁破壊電圧の向上を示すことが分かっています。しかし、絶縁油に分散させたナノ粒子は絶縁油中から放出される可能性があり、ナノ粒子の人体に与える影響が不明なため、現状では実用化は困難な状況にあります。 
 本研究は、大気中に放出されても全く問題ない窒素のナノバブルを絶縁油に導入・分散することで、ナノ粒子と同等にストリーマの進展を防止して絶縁油の絶縁特性向上を行わせると共に、絶縁油中に存在する窒素のナノバブルにより酸素が絶縁油中に溶け込むことを長期的に防止し、絶縁油を酸化劣化させないことにより長期的な絶縁耐力の維持を行わせるという全く新しいアイディアに基づく非常に斬新な研究です。一方、大量の窒素ナノバブルを分散させると、ちょっとした刺激によってナノバブルが互いに接触して大きな泡となり、絶縁破壊電圧の低下を引き起こしてしまう可能性があります。このように、ナノバブルの数(密度)と大きさによって、絶縁油が長期的安定性を示し、絶縁耐力を向上できる領域は限られた領域である可能性が非常に高い、チャレンジ性を有する研究です。 
 具体的には、2016年度に脱気した絶縁油の新油・劣化油に窒素のナノバブルを分散導入し、ナノバブルの大きさ・個数と絶縁耐力の関係を調査すると共に、水分を制御した絶縁油にナノバブルを分散導入し、絶縁油中の水分の影響を調査します。2017年度は、絶縁油を加速劣化させ、ナノバブルの大きさ・個数の変化を調査すると共に、絶縁耐力の変化を調査します。

図1 ナノ粒子存在時の絶縁油の破壊特性


5.ZnO添加エポキシの電界緩和の研究

 電力機器には高い信頼性と小型、軽量化が求められています。また、産業用・車載用・民生用の機器に利用されているパワー半導体には超高電界化が求められています。トンネル効果を示すZnO顆粒は、電力機器では避雷器に、電子回路では封止用絶縁物やバリスタに使用されています。本研究では、このZnO顆粒をエポキシやシリコン中に充填し、雷インパルス電圧を印可することにより破壊電圧を求めます。ある電界になると伝導性を持つZnO顆粒の性質により、どの程度の電界緩和作用が現れるのかを、ZnO顆粒の充填率をパラメータとして求めます。

図出典:平成27年電気学会電力・エネルギー部門大会
                     292,p7-3-13(2015)