研究内容


 雷・材料・診断研究室では、
  現在、以下の5項目に関する研究を行っています。
  詳しい内容については、本ページの下部をご参照ください。
 
項目 研究課題名
1 風力発電機ブレード耐雷保護の研究
2 超純水絶縁媒体の研究
3 ナノバブル絶縁油の研究
4 3Dプリンタ造形エポキシの研究
5 ZnO 添加エポキシの電解緩和の研究

 


1.風力発電機ブレード耐雷保護の研究

 雷が機器を貫通して破壊する事故は重大な問題であり、これを防止するには雷電流が絶縁物に侵入することを防げば良いです。当研究室はこれまでの研究で、放電の先端の高電界や圧力などが絶縁物貫通に影響が及ぼしていることが分かってきましたが、詳細は不明でした。本研究では、放電の周囲に従来想定されていたより拡がった電荷分布の存在や、放電着雷時に絶縁物に与える圧力を考慮して、放電が絶縁物にどのように作用して貫通するかというメカニズムの解明を目指します。研究の方法として、空気中に放電を生じさせ、放電経路上に絶縁物がある場合とない場合にポッケルス素子と圧力センサを用いて電界と圧力の時間変化の測定を行います。本研究によって、放電の電界分布や放電が絶縁物に与える圧力の影響を明らかにすることで、雷が絶縁物を貫通するメカニズムを解明して、風力発電機のブレード (羽根) などの機器を落雷被害から防止することが可能になると考えられます。

2.超純水絶縁媒体の研究

 油入変圧器の電気絶縁油として、環境汚染と枯渇が懸念されている鉱油が主に使用されています。このため近年では、合成油や植物油を使用する研究が進められています。一方、油以外の液体を変圧器に使用する研究は、ほとんど行われていません。当研究室ではこれまでの研究で、環境に無害な純水の絶縁耐力を調査し、電気絶縁油の代替として使用可能なレベルであることなどを明らかにしました。しかし、純水を変圧器の絶縁冷却媒体として使用するためには、抵抗率を向上させると共に、抵抗率低下を抑制する必要があります。本研究では、ダイヤモンド・ライク・カーボンで被覆した金属を純水で中で用い、窒素ファインバブルや高分子界面活性剤を純水に付加することで、純水の抵抗率と絶縁耐力を高めることができるか否かを明らかにします。


3.ナノバブル絶縁油の研究

 電力用変圧器には大容量化と小型化が求められており、変圧器内部の電気絶縁材料の性能向上が必要不可欠となっています。近年、油入変圧器の液体絶縁材料として用いられている電気絶縁油にナノ粒子を添加することで誘導率や交流絶縁破壊電圧 (AC BDV) などが向上することが報告されています。しかし、ナノ粒子が凝集すると放電の起点となり、AC BDV が低下することが問題となっています。一方、ファインバブル (FB) は液体中に長期間停滞することができ、凝集しないため、絶縁油に拡散させることで電気絶縁性能が飛躍的に向上する可能性があります。しかし、気泡は従来、電気絶縁の弱点となることが知られているため、FB を絶縁油に付加する研究は行われていません。当研究室ではこれまでに、絶縁油に窒素 FB を付加しても、未処理の油と比較して、短時間では絶縁耐力にほとんど差がないことを明らかにしました。本研究では、当研究室で開発した窒素 FB 発生装置の供給窒素ガス量や動作時間などの各種パラメータを変えた場合に、絶縁油中の酸素や水分の溶存量を低滅させて溶存窒素量のみを最大化できるか、また、絶縁油の長期安定化と絶縁耐力向上が実現できるかを明らかにします。

4.3D プリンタ造形エポキシの研究

 3次元造形プリンタが近年発展し、樹脂材料の製造への適用が期待されますが、一層ずつ積層させる製造方法のため、積層した層間にボイドと呼ばれる気泡が混入する可能性があります。ボイド内部の状況は外から観測できないため、従来は課電時の放電電荷を測定して樹脂の劣化状況を類推していました。このため課電した時間に対するボイド内部での劣化進行状況が詳細に分からないため、樹脂の寿命診断が困難でした。本研究では、課電直後のボイド内部のガス分析を行い、放電電荷と内部のガスの関係を明らかにするというまったく新しい手法で課電による絶縁物の劣化現象の新たな評価手法の確立を行うことを目指します。研究の方法は、課電した樹脂中の放電電荷を測定してボイドに注入されたエネルギーを評価し、その後に高真空中でボイドを壊してガス分析を行うことでガス種と質量の測定を行います。樹脂内部のガスを定量的に分析する手法を用いることで、様々な絶縁材料のボイドによる劣化現象の把握と、寿命診断が可能になると考えられます。

5.ZnO添加エポキシの電界緩和の研究

 電力機器には高い信頼性と小型、軽量化が求められています。また、産業用・車載用・民生用の機器に利用されているパワー半導体には超高電界化が求められています。半導体などの封止用絶縁物であるエポキシ樹脂やシリコン樹脂に、非線形抵抗材料である ZnO バリスタ粒子を混合した材料 (ZnO 添加エポキシ・シリコン) は、これらの要求を満たす可能性を秘めています。ZnO バリスタ粒子の特性はトンネル効果と合致していますが、詳細な電気特性は未だ明らかにされていません。本研究では、電力機器やパワー半導体などに ZnO 添加エポキシ・シリコンを適用することによる静電シールド省略に向けた基礎研究として、ZnO 添加エポキシ・シリコンの絶縁破壊特性や電界緩和効果の詳細などを明らかにします。